正月の侯、村中本主様をお迎えし祭りを催します。貴殿におかれましては舞台へ御登壇いただき、神を和めていただくようお願い申しあげます。××頓首」と書く。芝居師匠はこの招待状を受け取ると全村、芝居心のある者に召集をかけて準備を始める。大達村では正月の本主迎えの折、都合六日間を要し、正月六日に始めて九日に終わる。五日の午後全員が舞台に集合し舞台祭祀を行う。まず舞台中央に祭壇を置き、その上に衣裳、小道具を載せ、そして線香を灯して師匠を先頭に全員がひざまずいてお祈りする。これが終った後、初めて演目と配役の相談をする。かつての吹
吹腔戯の開幕後最初に芝居師匠が出て来て謹んで献物をし、四方を拝する
芝居師匠が財神に対して開光を行っている
腔戯の上演の仕方は大変原始的であった。上演前にわずかに舞台稽古をし、セリフを暗記することもなく、舞台へ立ってからプロンプター役の師匠にセリフをつけてもらい、指導を受けつつ演技した。舞台祭祀の日の翌日正式の上演とこの時にはいかなる者も前舞台に近づいてはならず、それに違反すると神を汚したものとしてとがめられた。
正月六日太陽が昇ると劇は始まる。ドラ、太鼓の音が響きわたると、はじめに師匠が登場して天地を謹んで拝し、線香に火を灯して舞台周りに插して神迎えをする。まず師匠が次のように祝詞を唱える。「雲龍県大達郷の村人は村を挙げて正月の神感謝の祭りを執り行います。神々の御降臨を謹んでお願い申し上げます。邪悪なもの、悪疫を退散して村中がやすらかに平穏舞事でありますことをお願い申しあげます。第一番に迎えるのが財神、趙公元師であり、この時財神に扮した者は微動だにもしないで舞台正面の八仙卓の上に端座しており、芝居師匠はこの神への「開元」を行う。師は一方の手に新しい筆を、他方の手に大きな紅い雄鶏を持って次のように唱える。「紫磨金のかぶとを頭にかぶり、五色の衣に身を包んだ貴方の頭上に血を一滴したたらせます。どうぞ神の御威光をお示しください」。そうして雄鶏のトサカをつねり切って、筆にその血をつけて神の五官に塗りつけつつ「開元咒」を唱える。
頭の御威光をお示しいただき、
頭の上の日月星の三光を、
顔の御威光をお示しいただき、
四方を照らしたまえ、
眼の御威光をおましいただき、
八方を照らしたまえ、
鼻の御威光をお示しいただき、
五香をかがしたまえ、
口の御威光をお示しいただき、
口に瑞祥を説きたまえ、
身体の御威光をお示しいただき、
黒虎にまたがり広く財物を寄せたまえ、
手の御威光をお示しいただき、
綱の鞭で宝物を寄せたまえ、
足の御威光をお示しいただき、
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